警察組織の基盤は“人”──善良な人々を守り抜くため、変わり続ける岡山県警察。その「現在地」と「これから」

パープル

written by ダシマス編集部

岡山県警察

岡山県の安全・安心な暮らしを昼夜問わず守り続ける、岡山県警察。県内22の警察署を拠点に、約4000人の警察官・警察行政職員が治安維持活動の最前線に立っています。県民の生命と財産を守るという重責を担う一方、その仕事内容は一般には広く知られていない側面も少なくありません。

今回お話を伺ったのは、警務課採用係の村山充司(むらやま あつし)さん。祖父、父も警察官という家庭で育ち、自身も大学卒業後にその道へ。交番勤務から始まり、刑事、生活安全、警察本部での勤務、そして警察庁への出向と、多彩なキャリアを歩んできました。現在は、自らの経験を次代へと繋ぐ採用の仕事に情熱を注いでいます。

「警察官のやりがいは、善良な県民の方々の力になることにある──」

多様なキャリアパス、変化する組織の実態、そして仕事と両立できるプライベートの充実。村山さんの歩みから、知られざる警察官の仕事の魅力と、岡山県警察が目指す未来に迫ります。

 

警務部 警務課 採用係 警部 村山 充司(むらやま あつし)さん

警務部 警務課 採用係 警部 村山 充司(むらやま あつし)さん

岡山県岡山市出身。岡山城東高校卒、同志社大学政策学部卒。祖父、父も警察官という一家に育つ。大学まで野球に打ち込み、甲子園出場経験も持つ。大学卒業後、岡山県警察官となる。交番勤務を皮切りに、刑事、生活安全、警務など様々な部署を経験。警察庁への出向を経て、2025年4月より現職。豊富な現場経験を基に、採用活動の最前線に立つ。休日は小学生の長男の野球の指導に携わるなど、仕事とプライベートの両立を体現している。

「困っている人がいるなら、助けに行くのが当たり前なんだ」──子どもの頃から身近だった警察官の仕事

──警察官のお仕事と聞くと、人によっては「厳しそう」「危険が多そう」といったイメージを抱くこともあるかもしれませんが、実際の現場はいかがでしょうか。

そういったイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。確かに荒れた現場や犯人を目の前にすることもありますが、善良な県民の方々と接する機会も多く、全てが危険と隣り合わせというわけではありません。

もちろん、事件を解決すれば大きな達成感があります。ですが、それ以上に心に残るのは、困っている人の力になれた瞬間です。私たちの活動は、県民の皆さんや地域のボランティアの方々の支えがあってこそ成り立っています。だからこそ、誰かの日常に寄り添い、直接「ありがとう」と言っていただけることが、この仕事の何よりの原動力になっていると感じますね。

──村山さんが警察官になったのは、やはりご家族の影響が大きいのでしょうか。

そうですね。父が県民のために一生懸命働く姿をずっと見ていました。休日でもポケットベルが鳴れば、私たち家族との予定を切り上げて仕事に向かう。子供心に寂しさを感じることもありましたが、それ以上に「困っている人がいるなら、助けに行くのが当たり前なんだ」と自然に受け止めていました。

実は、大学まで野球にはかなり打ち込んでいまして、プロを目指した時期もあったんです。小学校6年生の時には、父の東京勤務に付いて行き、東京都の選抜選手としてニューヨークで試合をする機会にも恵まれました。イチロー選手や松井秀喜選手より先にヤンキースタジアムの土を踏んだことは、今でも私のささやかな自慢です(笑)。

それでも最終的にこの道を選んだのは、やはり父の背中を見て育ったから。「いつか父のように人のために働く警察官になりたい」という思いが、心のどこかにずっとありました。

 

交番、刑事、生活安全。多彩な現場経験が育む、キャリアと視野の広がり

──村山さんはこれまで様々な部署を経験されています。それぞれの現場での、印象的な仕事についてお聞かせいただけますか。

どの部署にも、そこでしか得られないやりがいがあります。交番勤務は、事件発生時に誰よりも早く現場に駆けつけます。そこには、県民の安全を守る最前線ならではの緊張感と、初動捜査を担う重要な役割がありました。念願の刑事になった時は、関係者多数の特殊詐欺事件の捜査で、犯人グループのアジトへ突入するという緊迫した現場も経験しました。

生活安全課では、非行に走った少年や、性犯罪の被害に遭われたお子さんと向き合う機会がありました。特にお子さんが被害者の場合、ご家族は「辛い記憶を思い出させたくない」と捜査への協力をためらうこともあります。その気持ちに寄り添いながら、事件解決の必要性を伝え、最終的に「ありがとうございました」と感謝の言葉をいただいた時のことは、今でも忘れられません。

──どうも花形の刑事に注目しがちですが、どの部署のお仕事も、とても大事なことばかりですね。

おっしゃる通り、警察の仕事の幅は非常に広いです。私が経験した被疑者の適正な処遇等を行う留置管理の仕事もそうですし、各種相談や被害者支援に従事する警察官もいます。また、第一線で活動する警察官を支え、予算管理や給与、福利厚生等の業務などを担う「警察行政職員」の存在も、組織の円滑な運営を図るために必要不可欠です。

私自身、刑事志望でしたが、結果的に様々な部署を経験したことで視野が大きく広がったと感じています。どの部署が優れているということではなく、それぞれの持ち場で誰もが輝けるのが警察の仕事の魅力だと思います。

 

「昔ながらの堅いイメージはもうない」。ワークライフバランスが浸透する、岡山県警察の“今”

──警察組織は「昔ながらのやり方や文化が根強く残っていそう」というイメージがあるのですが、実際のところはどうなのでしょうか。

昔に比べれば、大きく変わってきていると思います。私は3年間警察庁へ出向していたのですが、岡山県警察に戻ってきた際は、その変化に驚きました。

実は、私は以前警務課に在籍していた際に、働き方改革の企画立案に携わっていたんです。当時はまだ、勤務時間を変えたり休暇を取得したりすることや、男性の育児休暇の取得に抵抗がある職員も少なくなかったのですが、久しぶりに戻ってみて、上司が率先して制度を利用している姿を見た時は、取り組みがしっかり組織に根付いてきたんだなと感慨深いものがありました。

今では、上司も早く帰るのが当たり前の雰囲気になっていますし、男性職員の育児休暇取得も推奨されています。ワークライフバランス=休むことではなく、「仕事と家庭を両立させること」ですが、こうした職場環境の変化のおかげで、私自身も休日は息子の野球に付き合う時間が作れています。仕事で張り詰めた気持ちを、家族との時間でリフレッシュする。この両立ができる環境は本当にありがたいですね。

──働きやすさだけでなく、職場の人間関係や雰囲気はいかがですか。

みんな基本的に明るいですよ(笑)。当然、仕事中は真剣ですが、休憩時間には和気あいあいと談笑するなど、メリハリのある雰囲気です。有志で岡山マラソンなどのイベントに参加したり、休日には山登りに出かけたりと、部署を超えた交流も活発ですね。テニス、釣りなどの同じ趣味を持つ仲間が集まって行われる活動もあります。県民の前に立つ際は規律が求められますが、常に気を張っているわけではないので、その点は安心していただければと思います。

私自身もかつては厳しい環境で育てられましたが、そのやり方が今の時代に通用するとは考えていません。社会は常に変化しており、私たち警察官も、過去のやり方に固執せず、常に学び、時代にアジャストしていく必要があると考えています。

特殊詐欺の手口が巧妙化し続けるように、社会情勢の変化とともに新たな犯罪の手口も出現しています。だからこそ、常に新しい知識や考え方を吸収し、それを部下の育成にも活かしていきたいですね。

 

危機感があるからこそ、挑戦の扉を開く。あなたの力が、岡山を守る力になる

──最後に、採用担当として、これから警察官を目指す方へメッセージをお願いします

正直にお話しすると、警察官の採用は年々厳しくなっており、強い危機感を抱いています。この10年で受験申込者数は半減しました。警察組織の基盤は「人」です。必要な人員を確保できなければ、救えるはずの命が救えなくなるかもしれない。それは、私たちの仕事において絶対にあってはならないことです。

だからこそ今、私たちは本気で変わろうとしています。そして、多様な方に挑戦していただくための環境を整えています。

例えば、「体力に自信がない」「勉強が難しそう」といった不安を少しでも払拭できるよう、体力試験の欠点を廃止したり、民間企業の採用でも一般的に行われている基礎能力試験(SPI試験)を導入したりと、受験しやすい制度に見直しを行っています。

もちろん、警察官としての責任を果たすため、厳しい訓練もあります。ですが、そこには万全の教育体制と、共に乗り越える同期や仲間の存在がありますし、「安全・安心の岡山」の実現のために乗り越えられると思っています。どの部門でも休みはしっかり取れますし、自分の時間を確保することもできますので、安心してほしいですね。

「警察官は難しいかも……」と思う前に、ぜひ一度、扉を叩いてみてほしいと心から願っています。
 

(取材・執筆:大久保 崇

 

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◆HP:https://www.pref.okayama.jp/site/kenkei/

◆求人情報:https://www.pref.okayama.jp/site/376/

 

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