【ダシマス老舗・エルジオ】石油事業の強化と異業種への参入。数々の挑戦のなかで目指す、揺るがない信頼構築

レッド

written by ダシマス編集部

創業30年以上の老舗企業に焦点を当てる本企画。持続的な成長と成功をおさめ、時代をまたぎ社会に貢献してきた歴史を紐解き、その長い期間によって培われた文化や知見から、多くの人に気づきとインスピレーションを与えることを目指しています。

本記事では、2018年に創業100周年を迎えた株式会社エルジオの常務取締役、木村 雄介(きむら ゆうすけ)さんにご登場いただきます。

エルジオの特徴は、創業当初から続く石油事業における柔軟な対応力と、既存分野にとらわれない新規事業への積極参入。攻めの姿勢でさまざまな挑戦を続ける経営方針の根底には、顧客と社員、そして地元への深い愛情がありました。

100年という大きな歴史を紡いでもなお、会社のビジョンやあるべき姿に向き合い進化を続けるエルジオの歩みとは。

株式会社エルジオ 常務取締役 木村 雄介(きむら ゆうすけ)さん

株式会社エルジオ 常務取締役 木村 雄介(きむら ゆうすけ)さん

1984年岡山生まれ岡山育ちの39歳。学生時代は都市計画を専攻。2010年に建設コンサルタントの会社に就職して主に官公庁向けシステムの企画・設計に従事。2017年に家業である当社へ入社。2019年より現職。変化の激しい時代を乗り越えながら成長し続ける企業を目指して日々奮闘中。趣味は読書。

取材:大久保 崇

取材:大久保 崇

『ダシマス』ディレクター。2020年10月フリーランスのライターとして独立。2023年1月に法人化し合同会社たかしおを設立。“社会を変えうる事業を加速させ、世の中に貢献する”をミッションとし、採用広報やサービス導入事例など、企業の記事コンテンツの制作を支援する。

執筆:神田佳恵

執筆:神田佳恵

フリーランスライター。インタビュー・エッセイ・広報note・SNS・コピーなどの分野にて執筆活動中。コミュニティ運営や編集、マーケターとしても活動の幅を広げる。一児の母。夫と息子、note、推し、旅が好き。

石油の販売・輸送のワンストップ、そして誠実な営業活動がエルジオの強み

 

――まず、貴社の創業の経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

1918年に私の曽祖父が当時の玉野で営業活動を開始したのが、創業のきっかけです。玉野市に造船所が建てられるタイミングで何か販売できるものをと営業したことを皮切りに、石炭・石油・油脂・塗料・船具の販売事業がスタートしました。

元々は木村商会という兄弟企業の一部門として機能していた石油事業を分離させ、弊社の前身である玉野石油店を1944年に設立。1949年に、当時は日本石油という名前だった現ENEOSの特約店としてのお取引を開始し、今に至ります。

 

 

――貴社の基幹事業でもある石油事業ですが、その強みを教えてください。

営業部門と物流部門のどちらも自社で持っているため、販売から輸送までワンストップで対応できることが大きな強みですね。物流機能を外注している場合は、事前の日程予約や諸々の調整を要したり、急な予定変更に対応しきれなかったりすることもあるかと思います。それを弊社であればすべて社内調整で進められるので、臨機応変に対応できます。

また、メーカーから仕入れた石油を備蓄しておけるよう、玉野市内に石油の油槽所を所有しています。石油製品は日々価格が変化するので、価格の下がった最適なタイミングで事前に仕入れ保管をしておくことができるのも弊社の特徴です。

 

 

――柔軟に対応できることが強みなのですね。創業からの100年という長い歴史を、築き上げることができた理由は何だと思われますか。

それぞれの時代にあった商品や事業を展開してきたことが大きな要因ではないかと思います。基本的にはエネルギー事業をメインにしていますが、その中でも石炭から石油に基幹商品を移し、需要に柔軟にお応えしながらお取引先をどんどん拡大してきました。

弊社の社訓には、「誠実な営業活動」が掲げられています。社員一人ひとりが真摯に向き合い期待に応えてきたからこそ、お客様の信頼を獲得し、長いお付き合いを現在まで守り続けてこられたのだと思っています。

 

受け継がれる経営精神。社員と家族の生活を必ず守り抜く

 

――木村さんのご経歴について、教えてください。

私は生まれも育ちも岡山で、高校卒業後に関東の大学へ進学しました。土木関係を学んでいた影響もあり、建築コンサルタント企業に新卒で入社し、エルジオとは異なる業界で7年ほど勤めました。

正直、就職活動をしている段階ではエルジオに入社することを考えていなくて。大学での学びを活かし、専門領域で働きたいと思っていました。現社長である父も、本音ではおそらくエルジオを支えてほしいという思いはあったはずですが、直接的な言葉で諭されることはありませんでした。私の意志を尊重してくれたのだと思います。

エルジオへの転職を考えたのは、父が60歳を迎えたころ。一般的には定年退職をするような年齢となり、それまで自由にさせてもらったし、今後は父を支えようと思いました。入社したその年に取締役となり、その2年後に現在の常務取締役に就任したという流れです。

 

――これまでを振り返り、エルジオに入社してから特に印象的だった出来事を教えてください。

2018年の100周年事業として、各部門の社員と連携しながらさまざまな企画に取り組んだことが印象に残っています。

具体的なものでいえば、毎年実施している全社ミーティングです。普段はエルジオグループのみで実施するところを、その年は兄弟会社の木村商会と合同で行うことに。木村商会はエルジオと同様に父が社長を務めているので、相互理解や連携を深める機会になればという想いでの取り組みでした。

また、弊社はJリーグチームのファジアーノ岡山の協賛企業という立場でもあるのですが、その年には協賛試合も開催し、社員にも観戦していただきました。社員旅行もいつもより思い切って豪華にするなど、社員に喜んでいただけるような企画にもたくさん取り組めてよかったと思います。

 

――記念の折に多くを還元されていて、とても社員を大切にされていると感じました。

おっしゃる通りです。社長から言われた印象的な言葉として、「経営者の仕事は、社員とそのご家族の生活を守ること」というものがあります。目の前の社員の向こうにいるご家族のお顔まで思い浮かべながら、その全員の生活を守っていくのが私の役目だと思うと、改めて非常に重要な仕事を任せていただいていると再認識するようになりましたね。

 

――ここまでお話を伺う中で、100年という時を超えて、大切な理念が今も受け継がれていることを感じました。

理念で言うと、2年ほど前に理念の再検討と言語化に取り組む機会がありました。基本的な方針は変わらないとしても、会社の歴史とともに中にいる人も入れ替わりますから、どうしても理念が希薄化してきてしまう。長年弊社を支えてくださったベテラン役員や社員にも協力を仰ぎ、社員全員が迷いなく同じ方向を向いていける会社としての考えを打ち出しました。

 

 

とはいえ、理念のすべてを一新したわけではありません。これまで大切にしてきた考え方があるからこそ、今のエルジオがある。残すべきものを残し、時代の変遷に合わせて新たな要素を取り入れていく意識で、理念のアップデートを行いました。

ビジョン・ミッション・バリューの3つに分解し、明確化させた理念が再浸透していくよう、現在は社内的な働きかけにも取り組んでいます。

 

危機を乗り越え、長く生き抜く企業であり続けるための多角化戦略

 

――エルジオの歴史のなかで、最も大きな困難は何でしょうか。

私の父が入社したころ、玉野市にテーマパークが建設されることになりました。不運なことに、その候補地の一部がかつて本社のあった場所だったそうで、移転を余儀なくされるという問題が起こったそうです。諸々の事情で無下に断ることができず、当時の社長だった祖父は移転を受け入れることを決断しました。

石油という危険物を扱っているということもあり、移転先をめぐって地域住民の反対運動もあったそうです。ようやく移転先が見つかってからも、移転に伴う膨大な費用が会社を圧迫し、非常に大きな問題になったと聞きました。

そのような状況下で、今までの仕事のやり方を抜本的に見直そうと、移転問題を機に大きな意識改革と徹底した社員教育を行ったそうです。

 

――危機を乗り越え長年続く老舗企業になるために、体制の見直しが行われたのですね。他にもリスクを軽減するため、これまでに意欲的に取り組んできたことはありますか。

事業の多角化です。特徴的なものを挙げると、2007年に参入したTSUTAYA事業があります。基幹事業の石油部門以外にも、会社を支えてくれる新たな柱となってくれるような事業への展開を狙っての参入でした。元々は弊社が運営するガソリンスタンドに併設できるサービスを探していたのですが、様々な経緯もあり香川県で直営店舗として運営されていた店舗を引き継ぐところから始め、現在では3店舗を運営しています。

 

――ほかにも事業の多角化の一環としてスタートした事業はありますか。

これも少し異色なのですが、介護部門もあります。弊社を育ててくださった玉野市の人口分布がどんどん高齢化している現実をうけ、何か地元に恩返しができる事業をという願いのもと出発しました。

最近はカーボンニュートラルという言葉も一般に知られ、CO2を排出するエネルギーを制限する時流があります。現在は毎日使用される大切なエネルギー源ですが、石油の利用量は減少している中でも、異なる事業で生き抜けるようにすることで、この先の10年、100年とエルジオをつないでいけると信じています。

 

信頼と挑戦がエルジオの代名詞。地域の安心と喜びをともに守る仲間求む

 

――職場環境の改善・向上などで、何か取り組んでいることはありますか。

3年ほど前に、人事評価制度の見直しを行いました。

それまでは各部門から上がってきた評価をもとに、最終的に役員が個別調整を行う仕組みで運用していました。でも本来、社員一人ひとりのことをよく知り、一番近くで見ているのは、ともに現場で働いている直属の上長。直接その働きを見ている者こそ、適正な評価を下すことができるはずなのに、役員が個別の評価に介入しすぎるのはあるべき姿ではないと考えました。

加えて当時は評価の考え方も統一されておらず、各人次第なところもあったため、このタイミングで体系的に整備する取り組みを行いました。今では評価方法も明確になり、さらに評価後のフィードバックを適切に行うことで、評価への納得感と社員の成長を促しています。

 

――この先の100年に向けて、エルジオをどのような企業にしていきたいですか。

事業の多角化や拡大に伴い、社内にさまざまな部門が存在するようになったので、うまくコラボレーションしてシナジー効果を生み出していきたいと考えています。そのためにも私個人としては、引き続き経営者として社員の生活を絶対に守り続けられるように尽力し、各事業の方向性や社内整備にも力を入れていきたいと思っています。

社長はよく、「お客様の信用・信頼・満足を何よりも大切にしよう」という言葉を口にします。弊社を語る上で「信用・信頼・満足」は決して欠いてはならない言葉ですし、日々の暮らしを支える事業者として、常にお客様から信頼していただける存在であり続けたいです。

 

――最後に、求職者へ向けたメッセージをお願いします!

エルジオは、時代の流れに合わせてたくさんの挑戦を重ねてきました。入社時の状況や仕事にとらわれず、新しいことにも前向きに取り組んでいける方がいれば、きっとこれからのエルジオをともに創っていくことができると思います。

昨今はAIなどさまざまな新技術が開発され続けていますが、それでも結局仕事とは人対人の関係から生まれるもの。かねてから弊社が掲げている「創りたいのは、いい関係。」という言葉の通り、エルジオは人と人とのつながりを起点に地域の安心や喜びを創出し続けます。弊社の考え方に共感していただける方は、今後のキャリアにエルジオを検討していただけたら嬉しいです。

 

エルジオの詳細はこちらから

・ホームページ:https://www.elgeo.co.jp/

 

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